VOICE

荒野にて

2023年9月6日

煌びやかな東京から四国の古びた小さな港町に単身移り住んで早1年半。
今になってここへ来た理由がわかる。
自分の時間軸で生きるにはとてもいい場所だ。
高台に建つ家の窓からは静かな海と小さな島々、奇妙な形をした山々が見える。
夕方にはその山の背に見事な夕焼けが見える。
真っ赤に太陽が燃え、あっという間に山影に消えてゆきその残光が白い雲を芸術的なグラデーションに染めていく。
この瞬間を誰かに伝えたいと思う。
俺の場合それが音楽を作る理由なのだろう。

気がつけば来年の2月で60歳。
若い頃の余分な灰汁はすっかり抜け落ち、俺という人生の本質が剥き出しになってきた。
顕になる自分に目を背けたくなることもあるが、それを偽るくらいなら曝け出す楽しみを見つけたいと思う。

バーチャルコミュニティっていうのかなぁ?
SNSというものに親しめない自分は時代に乗り遅れてる?
世界に向けて何をつぶやく?
様々な?が浮かぶ人には必要のないものなのだろう。
俺が世界に発信できるものは自分の音楽しかない。
その音楽は希望であると信じ願いを込めて画面をクリックする。

今さら人に認められたいとか、売れたいとか、という欲はないが
あるがままの自分の音楽が誰かの心に一瞬でも響けばそれで報われるよ。

遠い過去も未来もそれは虚像でしかない。
そんなものに囚われ生きる人生はまっぴらごめんだ。
昔がどうだろうと今こそがすべて。

世の中が変わろうとも、ひたすらに俺自身の物語を作り続けたい。
それが唯一の願い。
そして新作「Inside Man」という一つの物語が今ここに完成した。

自由という名の孤独の荒野にて。

照井利幸